豊洲市場のルーツ:築地市場から受け継いだ「日本の台所」の伝統
豊洲市場は、2018年に開場した新しい施設ですが、その魂と伝統は江戸時代から400年以上にわたり受け継がれてきたものです。
日本橋、築地、そして豊洲へと続く「日本の台所」の歩みをご紹介します。
起源:江戸・日本橋魚河岸(17世紀初頭〜1923年)
豊洲市場のルーツは、江戸時代の初期に遡ります。
徳川家康が江戸幕府を開いた際、大阪から漁師たちを呼び寄せ、江戸城への魚の献上を命じました。
彼らがその残りの魚を日本橋のたもとで売り始めたのが、「魚河岸(うおがし)」の始まりと言われています。
以来、日本橋は江戸の食文化の中心地として、大いに賑わいました。

伝説:築地市場の時代(1935年〜2018年)
転機が訪れたのは、1923年(大正12年)の関東大震災です。
日本橋の魚河岸は壊滅的な被害を受け、移転を余儀なくされました。
その後、海軍省の所有地であった外国人居留地跡(現在の築地)に拠点を移し、建設工事を経て1935年(昭和10年)、東京都中央卸売市場 築地市場が開場しました。
築地市場は、その後83年間にわたり営業を続け、日本国内のみならず「TSUKIJI」として世界中から知られるブランドへと成長しました。
独自の競り文化や、仲卸による高度な目利き技術は、この時代に確立されたものです。

進化:豊洲市場の開場(2018年〜現在)
長い歴史を誇る築地市場でしたが、施設の老朽化や、開放型施設ゆえの温度管理の難しさなど、現代の食の安全基準に対応する上で多くの課題を抱えるようになりました。
「日本の食文化を守り、さらに発展させる」ため、高度な衛生管理機能と物流効率を備えた新市場の建設が決定されました。
そして2018年(平成30年)10月11日、豊洲市場が開場。
築地で培われた伝統や賑わいはそのままに、最新鋭の設備を備えた「世界最大級の閉鎖型低温卸売市場」として、新たな歴史を歩み始めています。

豊洲市場の特色:世界最高水準の「品質」と「体験」
築地市場で培われた「目利き」の技と伝統を受け継ぎながら、豊洲市場は最新の技術と設備を導入し、世界最大級の閉鎖型卸売市場として進化しました。
その3つの大きな特色をご紹介します。
鮮度を守る「コールドチェーン」と「閉鎖型施設」
豊洲市場の最大の特徴は、外気の影響を遮断する完全閉鎖型施設であることです。
徹底した温度管理(コールドチェーン): 荷降ろしから、競り(せり)、仲卸店舗での販売、出荷に至るまで、施設内は商品に適した一定の低温に保たれています。この「途切れない低温管理」により、生鮮品の鮮度を極限まで保ったまま消費者の元へ届けることが可能になりました。
高度な衛生管理: 建物が閉じられているため、風雨や直射日光、埃、害虫などの侵入を防ぎます。これは、世界的な食品衛生管理基準(HACCPなど)の考え方に基づいた、安心・安全な市場の仕組みです。

人とモノの流れを分けた「安全で効率的な物流」
約40ヘクタール(東京ドーム約8.5個分)という広大な敷地を活かし、安全とスピードを両立させています。
動線の分離: トラックなどの「物流動線」と、買い出し人や観光客の「歩行者動線」を明確に分けています。これにより、市場内で頻繁に行き交うターレット・トラック(運搬車)との接触事故を防ぎ、スムーズな物流と安全な移動を実現しています。
立体的な構造: 複数階層の建物構造により、商品の搬入から搬出までを一筆書きのようにスムーズに行える設計となっており、迅速な配送を支えています。

「観光」と「食」が開かれた市場
プロの取引現場でありながら、一般の方や観光客が市場の魅力を体験できるエリアが充実しています。
見学者通路: 競り場や仲卸売場を見下ろす位置に、ガラス張りの見学専用通路が整備されています。衛生環境や取引の邪魔をすることなく、早朝の活気ある競りの様子や、プロの市場取引を安全に見学できます。
食と賑わいのエリア: 「魚がし横丁(物販)」や飲食店舗エリア、そして隣接する「豊洲 千客万来」など、市場の「食」をその場で味わい、楽しめる機能が一体となっています。

